皆さんは「グラウト材」ってご存知でしょうか?
DIYでモルタルやコンクリートを使った本格的な施工にトライしたことがある方なら、耳にした経験があるかもしれません。
グラウト材は「無収縮モルタル」と呼ばれる建築資材です。鉄筋コンクリート住宅だけではなく、幅広い分野で活躍しているグラウト材の意味や、使われる場面。それに、セメントやコンクリートとの違いを今回はご紹介します!
目次
グラウト材(無収縮モルタル)とは?
「グラウト材=無収縮モルタル」の意味
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「グラウト材とは無収縮モルタルである」とだけ説明されても、おそらくチンプンカンプンですよね。無収縮モルタルの意味は、読んで字のごとく「固まっても収縮しないモルタル」。収縮しないとは、「ちぢこまらない」ということです。
グラウト材は乾いても収縮しない
例えば、生のマンゴーを燻製にしてドライマンゴーにすると、生の状態のときよりも水気が抜けて小さくなりますよね。あれと同じ現象が通常のモルタルにはほぼ必ず起こります。グラウト材、すなわち無収縮モルタルは素材や配合、製法を工夫することで、収縮しないように改良されている材料なのです。
グラウト材は歪みや亀裂も発生しにくい
また、燻製にして徹底的に乾燥させたドライマンゴーは表面がグニャグニャに歪みますよね。ところどころ亀裂も発生しています。通常のモルタルにも全く同じことが起こりますが、改良されたグラウト材(無収縮モルタル)はこのような歪みや亀裂も予防できるように改善が加えられています。だからこそ、基礎などの補修材として建築物の耐久性・耐震性を向上させるためにグラウト材が活用されているのです。
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そもそも「モルタル」とは?
「モルタル」の意味
モルタルは、セメントに水と砂を混ぜ合わせて作る建築材料。材料に砂利が混じっていないぶんコンクリートと比べてコストが高価になりがちですが、施工が簡単で固まる前には適度にトロミを帯びた液状をしているのが特徴。そのトロミを活かして、建物の基礎やコンクリート建築の「隙間」や「亀裂」を手直しするための補修材としてよく使われています。この点はグラウト材と同じですね。
モルタルの施工は比較的簡単!
施工のやり方がとても簡単なので、いわゆる「匠の腕」をそこまで必要としていないのも魅力のモルタル。DIYでもよく使用される材料ですが、完全乾燥まで数日~20日程度かかるうえに乾燥後には収縮や歪み、亀裂が入りやすいというデメリットもあります。そのため、現在の日本の建築現場では昔ほど使用頻度は高くはありません。このデメリットを克服したのがグラウト材(無収縮モルタル)というわけ。
ただ綺麗にモルタルで仕上げるには「腕」が必須
昭和のころには、やたらとモルタル仕上げのキッタナイ建築物が乱造されていましたが、最近はあまり見ませんね。モルタルは「最低限レベルで仕上げるだけ」なら腕前はそこまで必要ありません。ただ、綺麗にモルタルで建物や土間などを仕上げようと思うと、熟練した腕がやはり必要となります。未熟な技術で仕上げられたモルタルは、素人目でもパッと見てキタナイのが分かるほど露骨です。
発展途上国やDIYの場面ではかなり重宝されるモルタル
まだ建築職人が育っていない発展途上国の建物などは、施工が簡単なモルタルで仕上げられているものが多いです。また、モルタルはホームセンターやネット通販などでも簡単に入手できるうえにDIY初心者の方でも比較的簡単に施工が可能な素材。例えば、土間の補修やちょっとした花壇の自作などには、モルタルがおすすめ。
インスタントモルタルで本格DIYをスタート!
今は水を混ぜるだけですぐに使える「インスタントモルタル」も売られていますね。インスタントモルタルであれば比較的、仕上がりも綺麗になってくれます。初めてモルタルを使う方は、インスタントモルタルから挑戦してみるのがおすすめです。
グラウト材の種類
グラウト材は実は「無収縮モルタル」だけじゃない!
実のところ、グラウト材は「無収縮モルタル」だけを指す言葉というわけではありません。
グラウト材の真の意味は「建設・土木工事の場で発生した空洞や隙間、亀裂や空間などを穴埋めするために注入される流動性のある液体素材のこと」となっています。つまり、無収縮モルタルは世の中に多く存在するグラウト材のなかの「ほんの1種類」に過ぎないということです。
グラウト材がAKB48なら、無収縮モルタルはそのメンバーの1人みたいなもの。ただ、一般的に建設・土木現場やDIYなどでよく使用されるグラウト材は、無収縮モルタルが多いですね。「AKBといえば指原さん!」みたいなノリです。そのため、今回はグラウト材=無収縮モルタルという認識で進めていきます。
グラウト材の「grout(グラウト)」の意味とは?
グラウト材の「grout(グラウト)」は英語で「仕上げ塗り」という意味。細かい目地や隙間、亀裂などを補修して仕上げる材料全般を指すのがグラウト材の本当の意味なんですね。ちなみに、グラウト材を使って施工する作業は「グラウチング」「薬液注入」と呼ばれます。目地や隙間、亀裂に液状のグラウト材を注入して埋めていくわけですね。
無収縮モルタル以外のグラウト材の種類を見ていこう!
せっかくなので、豆知識として無収縮モルタル以外のグラウト材の種類についても、ごく簡単に解説させていただきます。「ふーん、こんなのがあるんだな」程度に軽く流していただければ幸いです。
種類1.セメント系グラウト材
建設現場などでよく使用されるのがこちらの種類。今回主にご紹介している無収縮モルタルも、セメント系グラウト材の一種です。基本的に、現場で水を加えて練りこむだけで作成できるのでお手軽に施工の準備ができます。
種類2.ガラス系グラウト材
土木工事や大規模ダムの地盤改良工事などでよく使用されるのがこちらの種類。ガラス系のグラウト材は低粘度でサラサラとした状態のまま細かい隙間に浸透していき、乾燥すると驚くほど頑強に固まってくれます。主な活躍の場は専門工事で、DIYの場には使用されません。
種類3.合成樹脂系グラウト材
合成樹脂を配合したグラウト材がこちらの種類。セメント系よりも軽量で取り回しがしやすく、かつ簡単に施工ができます。乾燥後の付着率(馴染みやすさ)も高いので、建物の補修工事などによく利用されています。
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グラウト材(無収縮モルタル)が使われる場面とは?
グラウト材はコストが高いので部分的に使用される
グラウト材は通常のコンクリートやアスファルトなどの建材と比較して、コストがかなり高いので全面的に使用されることは通常ありえません。例えば、特に構造物のなかでも重要度の高い柱や梁(はり)の要所を補強するために、部分的にグラウト材が使用されます。
使用場面1.鉄筋コンクリート住宅の柱
グラウト材が使われる場面として、現在ごくありふれているシーンは「鉄筋コンクリート住宅の耐久・耐震工事」です。鉄筋コンクリート住宅は鉄筋を芯として立てたあとで、ベニヤ板で型枠を作り、そこに液状コンクリートを流して固めていきます。このときに鉄筋とコンクリートの間にできるわずかな隙間をグラウト材で埋めていくと、それだけで建物の耐久性・耐震性は大幅に向上するといわれています。
使用場面2.土間などの基礎工事
液状でサラサラと流れ出てくれるグラウト材(無収縮モルタル)は、土間などの基礎工事にも使われます。土間はもちろん、建物の基礎にあたる部分は地面から見て水平でなければいけません。粘度の低いサラサラとした液状のグラウト材を使えば、労せず水平な基礎を施工できます。
使用場面3.耐水性を高めたい構造物の補修・施工
建築物のほかにも、例えばダム工事などにもグラウト材はほぼ必須のマテリアルです。コンクリートをはじめとした通常の建築材は施工の段階で、高い確率で細かい隙間や亀裂が生まれます。このような空間をそのままにしておくと、そこからコンクリート内部に水が浸透して膨張・破裂を招きます。ダムや堤防、橋の支柱などの常に水と触れる部分は特に「耐水性」を高める必要がある部分です。こういった要所にも、グラウト材は積極的に活用されています。
使用場面4.ご家庭のDIY施工
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他にも、一般家庭のDIY施工の場でも、グラウト材はよく使われるアイテムです。例えば、ブロック塀をDIYで施工する際には、内部の鉄筋とブロックを結合させる充填液としてグラウト材が使われます。流動性のあるグラウト材を使用することで、一切͡コテなどの道具を使用することなく耐久性・耐震性・耐水性の高い頑丈な塀をDIY自作できるのです。他にも土間や花壇、それにタイルの目地埋めなど工夫次第でいろいろな使い道があるのも、グラウト材の魅力ですね。
グラウト材(無収縮モルタル)のメリット
グラウト材のメリットは大きく分けて3つある!
それではグラウト材のメリットとデメリットを簡単にまとめて見ていきましょう。まずはメリットからご紹介させていただきます。グラウト材のメリットは大きく分けて以下の3つです。
メリット1.施工面が綺麗・均一になりやすい
流動性のある、すなわち「シャビシャビ」の状態で流し込むように注入して施工するグラウト材は施工面が綺麗・均一になりやすいのがメリットです。コテなどを使用して馴らさなくても水が広がるように、自然と均一に注入できるのがグラウト材の嬉しいメリット。
メリット2.無収縮なので施工後の強度が持続しやすい
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グラウト材は施工後に乾燥させても無収縮なので、ほぼそのまま固まります。例えばゼリーやプリンを冷蔵庫で冷やして固めるようなもの。型さえしっかり作れば、そのままの形状でクッキリハッキリ固まってくれます。そのため、施工後にも長く強度を持続してくれるのがメリットですね。
メリット3.耐水性が高いので経年劣化に強くなる
他にも地味に大きなメリットが耐水性の向上です。グラウト材の注入施工は文字どおり、「みっちりと隙間なく」構造物の内部に浸透、固着してくれます。隙間がないので雨などが構造物の内部に染み渡る心配がありません。酸性雨やPM2.5などの有害物質のほか、花粉や砂塵で構造物が汚れたり摩耗したりする機会もグンと減らせます。そのため、グラウト材は構造物や建物の寿命を延ばすのにも一役買ってくれるといわれていますね。
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グラウト材(無収縮モルタル)のデメリット
メリットだけではなくデメリットも正しく把握しよう!
次にグラウト材のデメリットを簡単に見ていきましょう。どんな素材にも必ずデメリットが存在します。メリットだけではなくデメリットも正しく知っておき、賢くグラウト材を使っていきましょう!今回はグラウト材のデメリットを大きく2つに分けてご紹介させていただきます!
デメリット1.コストが高い
グラウト材は通常のモルタルなどよりも、コストが高いのが一般的です。各種の性能をこだわってパワーアップさせているぶんだけ、どうしてもグラウト材は生産コストが増えますからね。そのため、例えば大規模なDIY工事であれば、やたらめったらグラウト材を多用するのではなく要所だけピンポイントに使っていくなどの工夫が必要となるでしょう。
デメリット2.正しい手順で施工しないと悲惨なことに
他にもグラウト材は通常のモルタルと比較して扱いが難しいといわれていますね。流動性のあるサラサラとしたグラウト材は薬液注入の過程で漏れがあると、せき止められずにどんどん流れ出てしまいます。速乾性のグラウト材だと、本当にあっという間に固まってしまいますからね。
グラウト材(無収縮モルタル)とセメントの違い
セメントはモルタルやコンクリートの材料になる接着剤
よくセメントとモルタル、コンクリートを混同してしまっている方がいます。ただ、セメントはモルタル、コンクリートとは別物です。簡単にいえば、セメントは接着剤の役割を果たす材料の1つ。セメントを材料にして、いろいろな建築材ができあがります。モルタルやコンクリートも、セメントを材料にして作られる素材です。
セメントの種類
セメントと一言で口にしても、その種類はさまざまです。一般的によく知られている、いわゆるセメントは「普通ポルドラントセメント」と呼ばれるもの。これに砂と水を配合するとモルタルになります。さらに砂利を混ぜるとコンクリートになるわけですね。他にも、施工後30分ほどですぐに乾燥する「速乾性セメント」や水を規定量加えるだけですぐにモルタルやコンクリートとして完成させられる「インスタントセメント」などがあります。
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グラウト材(無収縮モルタル)とコンクリートの違い
グラウト材(無収縮モルタル)とコンクリートの違いは砂利の有無
グラウト材とコンクリートの一番大きな違いは「砂利が含まれているかいないか」ですね。コンクリートはセメントに水と砂。それに砂利を混ぜ合わせて作ります。安価に仕入れられる砂利を混ぜ合わせることで、カサ増しできるためコストをおさえて量産できるメリットがあります。また、砂利の粒の大小を調節することで用途に合わせた配合に調節することも可能です。
砂利が混ざっていることで生じる違いとは?
「砂利が混じっているだけなら大した違いじゃないのでは?」と思う方もいるでしょう。ただ、特にDIYの場でいえば砂利の有無はかなり大きな違いとなって表れてきます。モルタルは比較的簡単に自宅で作ることができるのですが、コンクリートは砂利が混じっているぶんだけかき混ぜるのに労力を使います。専用のコンクリートミキサーを用意すれば簡単に自作できますが、完全に手作業で自作しようと思うと、ムキムキのマッチョマンでもかなりの重労働になるでしょう。
違いを理解して上手に使い分けていこう!
また、グラウト材と違ってコンクリートはほぼ固形に近い粘度を持っています。そのため、細かいところに隙間なく注入していくのは基本的に不可能です。工事の現場やDIY施工の場でも、まずはコンクリートで大枠を固めておき、細かい部分はモルタルやグラウト材で埋めていくという使い分けが必要となるでしょう。基礎であればコレ。上物であればコレと自分で判断できるようになれば立派なDIYマスターですね!
まとめ
グラウト材を使ってDIYにチャレンジしよう!
昔は本職の方が主に使用していたグラウト材。現在ではホームセンターやネット通販などで簡単・お手軽に購入できるようになりました。もしも、ブロック塀や型枠を自作してDIYで構造物を建てたいときには、ぜひグラウト材を活用してみてください。隙間を埋めるのはもちろん、建物の基礎を作ったり補強したりするのにグラウト材を活躍してくれるはずです。
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